傑作と呼ばれるアルバムの登場はいつも突然だ。
バンドが何かのきっかけに急成長を遂げる瞬間というのがある。 元々レミオロメンというバンドは日本人ならではの情緒を感じさせる美しい言葉と、それぞれのパートが確かな実力を持つライブバンドとしても、デビュー当時から並みいるバンド達の中でも既に抜きん出た存在ではあった。 今回のアルバム「ether[エーテル]」ではストリングスやピアノの音色を取り入れるという、彼らの持つサウンドの新しい可能性を引き出すことに成功した、プロデューサーの小林武史の手腕も大きいところだが、3人の新たなサウンドアプローチに対する柔軟な姿勢とチャレンジ精神が、更に作品の可能性を広げる結果となった。彼らは彼ら自身の持ち味を損なわないまま、楽曲に対してより豊かな表現力を手に入れたのだ。 冒頭から美しいストリングスの調べの1曲目「春夏秋冬」で幕を開けるこのアルバムは、3ヶ月連続リリースとして先行でリリースされたシングルである「モラトリアム」や「南風」を始め、彼らならではの魅力である美しい季節の情景を背景とした叙情的な文学の匂いのする歌詞と、爽やかなポップさと情感を持った、傑作と呼ぶに相応しい輝きを放つ作品として完成した。 2ndアルバムにしてこんなに大きな一歩を踏み出すことになるとは、よもやレミオロメンの3人自身も予測していなかったのではないだろうか。 今回のアルバムを作り上げる前に迷いや葛藤を抱えた時期があったという。様々な感情を乗り越えた末にこの「ether[エーテル]」という素晴らしい作品が誕生したのだ。より高く飛ぶためには、低く身をかがめなければならないように、今にして思えば大きな成長を遂げる為に、そんな時期も彼らにとっては必要だったのかもしれない。
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プロフィール★
藤巻 亮太:(ボーカル・ギター)
生年月日/1980.1.12 血液型/O型 山梨県出身 神宮司 治:(ドラム) 生年月日/1980.3.5 血液型/A型 山梨県出身 前田 啓介:(ベース) 生年月日/1979.9.11 血液型/A型 山梨県出身 2000年: 12月 作詞作曲を手がける藤巻亮太(ボーカル・ギター)、スタジオミュージシャンとしても活動していた前田啓介(ベース)、細身の体躯からは想像できない力強いグルーヴを叩き出す神宮司治(ドラム)の三人で結成。(バンド名に意味はなく、メンバーがじゃんけんで勝った順に一文字、二文字、三文字と好きな言葉をつなげて作った。ちなみに、三人は小、中、高の同級生である。) 2001年: 群馬・前橋を拠点にライブ活動をスタートし、主に東京・下北沢のライブハウスを中心に活動を展開。日本語を大切にしたその歌は確実にファンを増やしていき、動員数も着実に記録更新を続ける。 2002年: 春 離れて暮らしていた三人は、さらにバンドに集中するため地元山梨に戻り、神社の母屋を借り、そこで作曲やリハーサルを重ねながら、ライブに励む日々が続く。ライブ会場でのみ販売していた自主制作CDも予想を超える反響とともに完売。 2003年: 3月:1st mini album『フェスタ』をリリース。レコード店 のインディーズチャートで軒並み上位をマーク。 11月:1stアルバム「朝顔」をリリースし、11月25日ファーストワンマンライブを SHIBUYA-AXにて行う。 12月:「COWNT DOWN JAPAN 03/04」に出演。31日のEARTH-1、ラストステージを飾る。 2004年: 1月16日から初の全国ワンマンツアー、TOUR2004“朝顔”スタート。8ヶ所9公演、大盛況に終わる。 2月6日、地元での初ライブ、SPECIAL LIVE“朝顔”in 山梨を山梨放送MBホールにて行う。 3月:3rd single「3月9日」をリリース。発売日である3月9日、メンバー3人の母校・山梨県御坂町立御坂中学にて、“3月9日 御坂中学校 体育館ライブ”を行う。町民の皆さんを中心に2000人を動員。人口12000人の町でこのイベントは町史に残るものとなった。 5月:4th single「アカシア」をリリース。5月29日下北沢Club QUEからLIVE CIRCUIT 2004“アカシア”スタート。7月9日Zepp Tokyoにてファイナルを迎え、全20公演、大盛況に終わる。 8月:夏の野外フェス、イベント等に多数出演。 2005年: 1月:3ヵ月連続リリース・第1弾シングル「モラトリアム」をリリース。(5th single) 2月:3ヵ月連続リリース・第2弾シングル「南風」をリリース。(6th single) 3月:3ヵ月連続リリース・第3弾2ndアルバム「ether[エーテル]」をリリース。同日、(3月9日)“レミオロメン 3月9日 武道館ライブ”を行う。 |
彼らのファンならば既に周知のことだが、「3月9日」は彼らの3rdシングルのタイトルでもあるし、昨年の3月9日は彼らの母校である山梨県御坂町立御坂中学にて、御坂中学校体育館ライブを敢行した日である。
そして2005年、今年の3月9日もまたレミオロメンの3人にとって忘れられない一日となった。そう、この日は1年4ヶ月ぶりの2ndアルバム「ether[エーテル]」の発売日でもあり、レミオロメン初の武道館公演の日となったからだ。
暗くなった会場を彼ら3人を待ちわびる観客の拍手が絶え間なく響き渡る。青い波がゆらめく光の中、レミオロメンの3人が登場だ。一際大きくなった客席の歓声が彼らを迎えた。
記念すべき今日のライブのオープニングを飾るのは、今回のアルバムの1曲目でもある「春夏秋冬」。
美しいストリングスの調べと共に観客の拍手が静かに会場を満たして行く。厳かで美しい季節感を感じさせるこの曲は今日の1曲目にピッタリのナンバーと言えるだろう。
一転して2曲目は「春景色」、スリリングなスピード感と力強いビートを持つこの曲、後半のサビにかけて神宮司治の怒涛のドラムが客席のグイグイと引っ張って行く。
昨日は武道館の夢を3回も見てしまったというエピソードを語った後、「今夜は最後までメチャクチャ楽しんで行って下さい。」という挨拶と共に、今回のアルバムの収録曲である「ドッグイヤー」を披露。語られたエピソードとは相反してとても初めての武道館での演奏とは思えない息の合った演奏を聴かせてくれた。
続いては1stアルバムからタイトル曲である「朝顔」、客席から自然と手拍子が沸き起こる。藤巻亮太のおおらかなボーカルと安定したプレイが心地良い一曲。
中盤「ちょっと暖かくなって来たけど、寒い曲を演ります。」というMCに続いて「ビールとプリン」、「電話」と1stアルバムからの切ないナンバーが立て続けに披露される。一つ一つの言葉の説得力を持って、大きな会場の隅々まで伝わっている様子が印象的だった。
「盛り上がっていこー!」の声と共に「すきま風」、リズム隊の2人が怒涛の重低音を轟かせて行く。
そして後半戦「雨上がり」イントロのギターが鳴り響いた瞬間、会場は熱狂の渦に巻き込まれて行った。
駆け抜ける疾走感と共に客席の振り上がるこぶしが壮観だ。
間髪を置かず「モラトリアム」、イントロのフレーズと共に絶妙なタイミングで吹き上がるドライアイスに一際大きな歓声が上がった。まるで上昇気流が吹き抜けて行くような勢いの演奏に客席のムードは最高潮を迎える。
続いて今回のニューシングルである「南風」が演奏されるシーンでは、会場中が爽やかな感動に包まれて行った。
美しいピアノの旋律が心に沁みる「海のバラッド」で締め括った後、客席のアンコールに応えて再び登場した彼らは「アカシア」や「日めくりカレンダー」を立て続けに披露してくれた。
そして「今日はレミオロメンにとって特別な日になりました。この日にこの歌を聴いて下さい。」と、藤巻からの言葉に続いて、本日のラストナンバー「3月9日」。結婚する友人に贈られたというこの曲は新たな門出を祝う曲であると共に、この日がレミオロメンにとってまさに新たな旅立ちに相応しい記念すべき一曲なった。
初の武道館でのライブにも関わらず、観客との距離感を全く感じさせない自然体の演奏を聴かせてくれたレミオロメンの3人。
そこがライブハウスであっても、武道館であっても彼らにとってライブに対する姿勢は会場の大きさとは関係ないのだという、彼らの器の大きさを実感させられたライブであった。
これから先、もしも彼らを取り巻く環境が変わってしまったとしても、彼らの大切な部分はきっとこれからも変わらないだろう。それがレミオロメンらしさでもあり、彼らの一番の魅力なのだと思う。
5月からニューアルバム「ether[エーテル]」を携えての全国ツアー、レミオロメン TOUR 2005 "ether trip"が予定されている。
また一段と大きく成長した彼らのライブに是非、足を運んでみてほしい。